雪舟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 雪舟(せっしゅう、応永27年(1420年) - 永正3年(1506年))は、室町時代に活動した水墨画家・禅僧。「雪舟」は号で、諱(いみな)は「等楊」(とうよう)と称した。
備中に生まれ、京都相国寺で修行した後、大内氏の庇護のもと周防に移る。その後、遣明船に同乗して中国(明)に渡り、中国の画法を学んだ。
現存する作品の大部分は中国風の水墨山水画であるが、肖像画の作例もあり、花鳥画もよくしたと伝える。宋・元の古典や浙派の画風を吸収しつつ、各地を旅して写生に努め、中国画の直模から脱した日本独自の水墨画風を確立。後の日本画壇へ与えた影響は大きい。
現存する作品のうち6点が国宝に 指定されており、日本の絵画史において別格の高い評価を受けているといえる。このため、花鳥図屏風など「伝雪舟筆」とされる作品は多く、真筆であるか否 か、専門家の間でも意見の分かれる作品も多い。代表作は、「四季山水図(山水長巻)」「秋冬山水図」「天橋立図」「破墨山水図」「慧可断臂図」など。弟子 に、秋月、宗淵、等春らがいる。
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生涯 [編集]
応永27年(1420年)、備中赤浜(現在の岡山県総社市)に生まれる。生家は小田氏という武家とされている。幼い頃近くの宝福寺に入る。10歳頃京都の相国寺に移り、春林周藤に師事、禅の修行を積むとともに、天章周文に絵を学んだ。
享徳3年(1454年)頃周防に移り、守護大名大内氏の庇護を受け、画室雲谷庵(山口県山口市)を構える。寛正6年(1465年)頃、楚石梵琦(そせきぼんき)による雪舟二大字を入手し、龍崗真圭に字説を請。以後、雪舟を名乗ったものと思われる。これ以前は拙宗等楊と名乗っていたと思われるが、拙宗と雪舟が同一人物であることを示す確実な史料はない。
応仁2年(1468年)に遣明船で明へ渡航。各地を廻り、約2年間本格的な水墨画に触れ、研究した。天童山景徳禅寺では「四明天童山第一座」の称号を得る。文明元年(1469年)に帰国し、周防のほか豊後や石見で創作活動を行う。文明13年(1481年)秋から美濃へ旅行。文亀元年(1501年)頃には天橋立に赴き作品を残している。
没年は確実な記録はないが永正3年(1506年)に87歳で没したとするものが多い。文亀2年(1502年)とする説もある。命日も8月8日(古画備考)、9月16日(雪舟伝)など諸説あり、最期の地は石見の大喜庵。雪舟と親交があったとされる益田兼堯の子孫・益田牛庵(元祥)執筆の「牛庵一代御泰公之覚書」で「雪舟(中略)極老候而石見之益田へ被罷越(まかりこされ)於彼地落命候(後略)」と有り、終焉の他は近年の研究で益田と確定された。雪舟の生涯には謎とされる部分が多い。
涙で描いた鼠 [編集]
雪舟についてこんな伝説が残っている。
''宝福寺に入った幼い日の雪舟が、絵ばかり好んで経を読もうとしないので、寺の僧は雪舟を仏堂の柱にしばりつけてしまいました。しかし床に落ちた涙を足の親指につけ、床にねずみを描いたところ、僧はその見事さに感心し、雪舟が絵を描くことを許しました。
これは雪舟について最もよく知られた話であると思われる。初出は江戸時代に狩野永納が編纂した『本朝画史』(1693年刊)である。
神格化 [編集]
雪舟の神格化は江戸時代から始まった。狩野派が当時画壇を支配していたが、雪舟を師と仰ぎ、諸大名が雪舟の作品を求めたからであるとされる。そのために雪舟作とされる作品が増えたと言われる。雪舟の人気を反映して、『信仰祇園祭礼記』(人形浄瑠璃・歌舞伎作品。宝暦7年12月(1758年1月)初演。雪舟の孫娘、雪姫が活躍する「金閣寺」の場が有名)のような作品が上演された。日本文化の一つを生んだ雪舟は、今や日本を代表する歴史人物の一人となっている。
主要作品 [編集]
国宝 [編集]
- 秋冬山水図 2幅(東京国立博物館)
- 四季山水図巻(山水長巻)1巻(毛利博物館、1486年(文明18年))
- 山水図(破墨山水図)(東京国立博物館、1495年(明応4年))
- 慧可断臂図(愛知県・斉年寺、1496年(明応5年))
- 天橋立図(京都国立博物館)
- 山水図(個人蔵)
重要文化財 [編集]
- 雪舟作品
- 四季山水図 4幅(東京国立博物館)
- 四季山水図 4幅(石橋美術館)
- 四季山水図巻(山水小巻)1巻(京都国立博物館)
- 倣高克恭 山水図巻 1巻(山口県立美術館)
- 倣夏珪 夏景山水図(個人蔵)
- 倣夏珪 冬景山水図(個人蔵)
- 倣李唐 牧牛図(山口県立美術館)
- 倣李唐 牧牛図(山口県立美術館)
- 倣梁楷 黄初平図(京都国立博物館)
- 倣玉澗 山水図(岡山県立美術館)
- 山水図(香雪美術館)
- 益田兼堯像(益田市立雪舟の郷記念館)
- 毘沙門天図(相国寺承天閣美術館)
- 伝雪舟筆花鳥図
- 「拙宗」印のある作品
- その他
- 題雪舟山水図詩(了庵桂悟筆) 附:雪舟自画像(模本)(藤田美術館)
参考事項 [編集]
- 雪舟は外国の切手に描かれた最初の日本人である。昭和31年(1056年)に開かれた世界平和会議で世界平和文化人として日本から選ばれたのが雪舟だった。それを記念してソビエト連邦とルーマニアで切手が発行された。
- 山口市の雲谷庵跡には庵が復元されている。
- 山口市の常栄寺には大内政弘が雪舟に命じて作らせたと言われる雪舟庭がある。
- 島根県益田市の大喜庵には雪舟の墓所がある。
- 岡山県井原市の重玄寺跡には雪舟のもとの伝えられる墓が残る。
- ニューヨーク市内の路上で雪舟の絵が売られていたことがある。
参考文献 [編集]
- 『雪舟等楊 「雪舟への旅」展研究図録』(山口県立美術館 中央公論美術出版 2006年)
- 『没後500年特別展「雪舟」』(図録、東京国立博物館、京都国立博物館、2002年)
- 『雪舟の芸術・水墨画論集』(金沢弘 秀作社出版 2002年)
- 『画聖雪舟』(沼田頼輔、『論創叢書』1、論創社、2002年3月、ISBN 4-8460-0241-1)古典
- 『雪舟応援団』(山下裕二、赤瀬川原平 中央公論新社 2002年)
- 『雪舟はどう語られてきたか』(山下裕二編・監修 平凡社ライブラリー 2002年)
- 『雪舟 水墨画の巨匠 第1巻』(中島純司ほか 講談社 1994年)
- 『雪舟 新編名宝日本の美術14』(中島純司 小学館 1991年)
関連項目 [編集]
外部リンク [編集]
山口開府650年・湯田温泉復活300年記念事業
雪舟「四季山水図」映像展示 「映像の空間"大殿"」
山口開府650年・湯田温泉復活300年記念事業雪舟「四季山水図」映像展示 「映像の空間"大殿"」
会期:2010年9月25日(土)・26日(日)・30日(木)
10月1日(金)・2日(土)18:00-20:30
会場:一の坂川多目的広場(山口市後河原/惣野旅館 横)
鑑賞無料
一の坂川に映える、雪舟の傑作「四季山水図」
山口開府の節目の年を記念し、巨大な映像絵巻に蘇る大内文化の雅
山口開府650年・湯田温泉復活300年記念事業の一環として開催する映像展示「映像の空間"大殿"」では、毛利博物館に所蔵されている国宝、雪舟の「四 季山水図」(山水長巻)を写した映像を、一の坂川(山口市・大殿地区)沿いの特設スクリーンにて計5日間にわたって上映します。「四季山水図」を、約10 倍もの大きさで投影し、巻物の閲覧方法と同じようにゆっくりと横方向に動かした巨大な映像絵巻。画聖雪舟が1486年に描いた風景が、一の坂川の夕暮れと ともに現代の情景として蘇ります。
大内文化の中心地として栄えた大殿、その交通路として賑わいを見せた川のほとりを舞台に、「西の京」の雅を象徴する雪舟の代表作を上映する本イベントを通じ、山口開府の節目を彩ります。
参考写真:向井知子による展示イメージ
図巻は、映像絵巻に―。
実際の風景に重なる、水墨画で描かれた世界
「四季山水図」 雪舟等楊筆
一般に「山水長巻」とも呼ばれ、雪舟の代表作、生涯の傑作として知られている。移り行 く四季の変化を、長さ16mの長巻の上に、雄大な構図で描き出しした水墨画。建物や人物は中国風であるが、微妙な四季の変化の描写は日本の自然を描いたも のであり、その雪舟独自の筆意に満ちた水墨画は、室町水墨山水画の最高傑作の一つとされている。
雪舟は、1464(寛正5)年に山口に移り、1467(応仁元)年には、日明貿易の中心的役割を担っていた大内氏の遣明船で中国に渡り、それを契機に画僧 としての名声を高めた。大内氏が西国一の有力大名として経済的・文化的に繁栄したこの時代には、数多くの公家や禅僧、文人らが山口に訪れているが、中でも 雪舟は、大内文化に大きな足跡を残したとされている。
本作は、山口が「西の京」と謳われる基礎を築いた大内氏第29代当主大内政弘の時代に描かれ、献上されたもので、大内氏の滅亡後は、毛利氏が所有し、以降毛利家により保存され、現在は毛利博物館に所蔵、毎年11月に公開されている。
雪舟等楊筆「四季山水図」
1486(文明18)年12月 原本:40.8cm×1602.3cm 毛利博物館蔵 国宝
展示映像
「四季山水図」を高精細撮影した映像データを、アーティストの向井知子が、本イベント に合わせ、編集し、特別に演出。実際の図巻の10倍もの大きさのスクリーン(横6m、縦4m)に投影される映像は、風景が移ろっていくかのようにゆっくり したスピードで動いていく。山口県立美術館での作品展示をはじめ、映像を駆使した空間演出で様々なプロジェクトを展開するアーティストにより、雪舟の水墨 画の風景は、実際の大殿の町並みに重なり、新たな魅力を開示する。
(上映時間:50分)
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