2014年1月6日 星期一

「トレンチ・コート (風衣) の研究」 簡素美の極致

出石尚三 紳士服飾研究

「トレンチ・コートの研究」 簡素美の極致

  • 文 出石尚三
  • 2014年1月6日
写真:    
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 「茶はさびて心はあつくもてなせよ」といいます。千利休の言葉です。これはもう少し長く「茶はさびて心はあつくもてなせよ。道具はいつも有合(ありあわ せ)にせよ」と続きます。寂(さび)は難しいものです。が、「簡素美の極致」と置き換えれば、分かりやすくなるのではないでしょうか。茶の湯は質素・簡素 でかまいません。道具も今持っているもので良いのです。しかし、心だけは常に最高の状態にしてお客様をお迎えし、おもてなしをしなさい、と教えているわけ です。
 もっと簡潔に「寂びたるものは良し。寂ばしたるもの悪しし」という言葉もあります。ごく自然の心の動きとして、簡素美の極致に至るのは良い。しかし、計算をしてあたかも簡素美であるかのように見せるのは良くない、といったところでしょうか。
 トレンチ・コートの美学もまた「寂」と相通じるものがあるのではないでしょうか。買ったばかりの新品はなんとなくぎこちないものです。5年、10年と着続けているうちに、体に馴染(なじ)んできます。貫禄といえば貫禄、寂といえば寂でしょう。
 トレンチ・コートは元々雨よけ、埃(ほこり)よけであって、汚れるのは当然なのです。いや、汚れは勲章です。スーツなどを汚れから守ったことの証明なの ですから。着ているうちに、自然に汚れてくるのは、味わいの深まりだと考えるようにしましょう。それは年輪であり、熟成です。ことにステッチの縫い目が少 し擦れ、多少波打ってきたりすると魅力があります。以前、極上の鞄には布カバーを付けたものですが、それに似ているのかもしれません。
 結局のところ「トレンチ・コートはさびて心はあつくもてなせよ」ということになるのではないでしょうか。

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